【症例報告】椎間板ヘルニア

今回は「椎間板ヘルニア」です。

 

「ヘルニア」=腰の病気? と思われる方が多いと思いますが、「ヘルニア」とは「逸脱する」という意味です。

横隔膜ヘルニア、鼠径ヘルニア、臍ヘルニア等、様々な「ヘルニア」があります。

「椎間板ヘルニア」とは椎体と椎体の間にある「椎間板物質」が逸脱するという病気です。

そのため、椎間板ヘルニアは腰だけじゃなく、頸部にも起こります。

ミニチュアダックスフンドが代名詞のようになってますが、様々な犬種で起こる病気です。

 

 

この椎間板ヘルニアには重症度の評価のため、5つの「グレード」があります。

 

グレードⅠ:痛みだけ

グレードⅡ:歩行可能な不全麻痺

グレードⅢ:歩行不可能な不全麻痺〜完全麻痺

グレードⅣ:自力で排尿できない

グレードⅤ:深部痛覚消失

 

このグレードに応じて治療法を決めて行きます。

 

治療法は大きく分けて2つあります。

 

内科療法:投薬と安静

外科療法:手術で逸脱した椎間板物質を取り除く

 

グレードⅠ、Ⅱでは内科療法で改善する可能性が高いですが、グレードⅢ以降では外科療法の方が治療成績が良く、推奨されます。

 

 


 

今回の症例は12歳齢のミニチュアダックスです。

3日前に歩き方がおかしくなり、その後立てなくなってしまったとのことでした。

その後、1週間内科療法を行いましたが、改善が認められなかったため、当院に来院されました。

来院時には排尿は出来ていましたが、自力での起立、歩行は困難だったため、グレードⅢと診断しました。

 

 

まず、脊髄造影とCT検査により、部位の特定を行いました。

 

脊髄造影後のx線画像

 

脊髄造影後のX線画像で、第11胸椎と12胸椎の間で右側からの圧迫が認められました。

 

CT検査では、脊柱管内の右側を椎間板物質が占拠し、脊柱管が左側に圧迫されている様子がはっきりと確認出来ます。

 

このように病変部位を特定し、手術を行いました。

 

 

術後は5日程で、フラつきながらも歩けるようになりました。

術後2週間ではまだフラつきはありましたが、日常生活に支障が出ないくらいにしっかり歩けるようになり、1ヵ月後にはだいぶしっかり歩けるようになりました。

術後経過は良好です。