【症例紹介】リンパ腫

動物のリンパ腫は様々な原因が考えられていて、ねこちゃんではウィルス感染と密接な関係があるとされていますが、わんちゃんの場合は原因不明です

リンパ腫はその発生部位によって、多中心型、縦隔型、消化器型、その他に分類されています

リンパ腫には低分化型リンパ腫と高分化型リンパ腫があり、それぞれにT細胞性とB細胞性があります

低分化型リンパ腫の方が高分化型リンパ腫に比べて悪性度が高く、治療方針も全く異なります

そのため、詳しい検査をおこなって病気を鑑別することが大事です

ご紹介するわんちゃんは持続的な下痢と食欲不振の症状が見られた9歳のチワワの子です

血液検査は正常でしたが、超音波検査の結果は消化管の構造異常が見られました

正常に見える箇所の消化管

異常の見られる消化管は正常箇所に比べて、太くて構造が不整です

腹腔鏡による検査と、消化管の生検を行いました

お腹を2センチほど切開してラップフィルムという腹腔鏡用のフィルムを装着し、腹腔鏡検査を行いました

腹腔鏡下での正常な消化管

異常な消化管は硬く、消化管表面が変色していました

フィルムを通して消化管をお腹の外に出して、異常な消化管の一部を切除して病理組織学的検査を行いました

診断結果は高分化型T細胞性リンパ腫でした

今回ご紹介したわんちゃんはステロイドによる治療を行い症状は改善しましたが、腫瘍細胞は緩やかに増殖しますので抗ガン剤による治療もおこなう場合があります

腹腔鏡による検査をおこなうことで、消化管の生検も衛生的におこなうことができて開腹手術に比べて痛みも少なく、とても小さなきずで詳しい検査をすることができました