仙椎骨折

ご紹介するわんちゃんは仙椎という骨の骨折をしてしまったトイプードルです。

仙椎は画像の矢印のところにある腰椎と尾椎の間にある大きな骨で、骨盤と関節している骨です。

仙椎の中にも神経繊維の束が通っていて、大腿神経などの後ろ足を動かす神経や会陰部など排泄器官の働きにも重要な神経が存在しています。

仙椎は骨盤と関節していることから、股関節の屈伸運動時にもその重要な働きを担っています。

自宅で受傷して、その後に後ろ足の歩き方が異常との事で来院しました。

来院時の歩き方(クリック)

来院時の歩き方は、後ろ足に体重をかけたがらないような歩き方で、ふらつきがありました。

神経学的検査では両後肢で異常は見られませんでしたが、整形外科学的検査において、両側股関節屈伸時に骨盤周囲で骨の軋轢音が触知されました。

レントゲン検査で仙椎と恥骨、坐骨の骨折が検出されました。

脊椎や骨盤周囲の骨は、形状が複雑なため正確な診断が困難です。

より詳細な診断のためCT検査を行いました。

CT断層撮影画像、矢印の箇所が骨折しているところです。

仙椎骨折と診断し、手術による治療を行いました。

術後の単純レントゲン画像とCT断層撮影画像です。

仙椎の背側椎弓切除により脊髄神経の減圧治療を行いました。

ヘッドレスコンプレッションスクリューという特殊なインプラントを使用し骨折の固定を行いました。

仙椎には大切な神経が通っているため、神経に触らずに骨折を固定する必要があります。ヘッドレスコンプレッションスクリューは安全に骨折治療が行うことができるため、正確な骨折固定を行うことができました。

恥骨と坐骨骨折は通常、症状がみられることはありません。そのため、仙椎の治療のみをおこないました。

術後の歩き方(クリック)

手術後1週間の歩き方は術前と比較して改善し、痛みが軽減してふらつきがなくなりました。

手術から1ヶ月間は自宅にて運動を制限して安静にしてもらいましたが、その後の経過は良好に改善しました。

動物にとって歩き走るという行動は、豊かな暮らしのために重要です。

当院では整形外科、神経外科に力を入れて診療をしています。

どこか痛そう、歩き方に異常を感じるなど気になる症状がありましたらご相談ください。