前足の痛み

犬の前肢跛行(足を引きずる、ケンケンする歩きかた)では肩関節の痛みが原因の場合があります。

肩関節の病気はいくつか種類がありますが、今回ご紹介する病気は上腕二頭筋腱滑膜炎です。

上腕二頭筋腱滑膜炎は上腕二頭筋の腱やその周囲が炎症を起こす、中〜大型犬によく起こる病気です。

痛み止めの内服や、安静にしていても症状が改善しない場合は手術による治療になります。

手術方法は痛い肩関節をプレートで固定する方法や上腕二頭筋腱の通り道を変更する方法などがありましたが、おおよそ30%の確率で様々な合併症が報告されていて歩行機能の改善には時間がかかる治療法でした。

近年では動物でも関節鏡手術が可能になり、関節鏡手術では肩関節に内視鏡を挿入し、鏡視下で痛めた腱を切断処置をするため、体へのダメージが少ない手術が可能になりました。当院でも様々な関節疾患で関節鏡を用いた手術を行なっています。

初診時の歩き方(クリック)

ご紹介するわんちゃんは中年齢のフラットコーテッドレトリバーで、数週間前より右前肢を痛がり始め痛み止めを飲んでも足が地面につけなくなってしまったとのことで来院しました。

X線検査で、右肩関節に小さな骨片のような構造が認められたためCT検査を行いました。

CT検査で上腕二頭筋腱領域に骨片があることが確認されました。

上腕二頭筋腱炎による腱の石灰化、もしくは小さな関節ネズミが痛みの原因と考えて関節鏡手術を行いました。

関節鏡の動画(クリック)

肩関節内部は重度に炎症し、上腕二頭筋腱部も充血した滑膜で覆われていました。

上腕二頭筋腱滑膜炎と診断し、上腕二頭筋腱を切断処置しました。

手術後の歩き方(クリック)

手術後には完全ではありませんが痛かった前肢を使用して歩行が可能になり、肩関節の動きはどんどん改善してきています。

上腕二頭筋腱滑膜炎は関節鏡を用いることで診断・治療が行える病気ですが、診断が困難です。当院では様々な画像診断装置や手術装置を導入していますので、難しい病気の診断・治療が行えます。歩き方に異常が見られたり、どこか痛そうなどお困りのことがありましたらご相談ください。