【症例報告】腹腔鏡を用いた潜在精巣摘出

今回の症例は「潜在精巣」です。

これは精巣が陰嚢内に下降せず、どこかに停留してしまう状態です。

通常、生まれた直後は精巣はお腹の中にあります。

生後1ヵ月以上経って、左右の鼠径部(内股のあたり)にある鼠径管を通って陰嚢内に降りて来ます。

個体差はありますが、遅くとも4−5ヵ月までには下降すると言われています。

停留する場所は、鼠径部あるいは腹腔内がほとんどです。

犬、猫ともに起こりえますが、犬の方が発生は多いです。

片側の精巣が下降しない場合が多いですが、両側の場合もあります。

 

潜在精巣の問題点は、精巣が体温によって異常な高温環境に曝されるため

・精巣腫瘍の発生率が高い

・正常な精子形成が行われない

(※片側性の場合、正常に下降している精巣内では正常な精子が作られるので、繁殖能力はありますが、潜在精巣自体が遺伝性疾患と考えられているため、繁殖を行うことはオススメできません。)

ということが挙げられます。

 

そのため、去勢手術を行うことが推奨されます。

 

鼠径部であれば、皮膚のすぐ下にあることがほとんどなので、傷口も小さく、本人への負担は通常の去勢手術と変わりませんが、腹腔内の場合、開腹手術になります。

お腹の中から小さい精巣を見つけ出すために視野を確保する必要がありますが、視野を確保する為には傷口を大きくしなければなりません。そのため、本人への負担は大きくなります。

しかし、腹腔鏡を用いると、小さい傷口でお腹の中全体を見渡せますので、本人への負担は少なく、確実に手術を行うことが可能です。

 


 

今回の症例では腹腔内の潜在精巣(片側)腹腔鏡を用いて手術を行いました。

腹腔鏡を挿入後、精巣はすぐ発見できました。(青丸)

精巣を鉗子で把持し、血管、精管を切除しました。

術後

 

このように、腹腔鏡による傷跡は2カ所ありますが小さくすみます。

 

 

精巣が降りて来ていない!お腹の中に残ってるかも!と言われた方はお気軽にご相談下さい。