【症例報告】血液検査だけでは分からないこと

今回は検査って色々組み合わせる必要がありますという話です。

脅すようで悪いですが血液検査だけで全ての病気が分かるわけではないよと言うことです。

 

大きいワンちゃんで突如起立ができなくなったとのことで来院しました。

口腔内をみるとかなりの貧血が認められ、早急な対処が必要だと判断しました。

血液検査、レントゲン検査、エコー検査を行ったところ、

血液検査:貧血、血小板の低下、腎数値の上昇、急性炎症値の上昇

レントゲン検査:腹部全体のコントラストの低下(臓器同士の境がわかりにくいこと)、肺野は問題なし

エコー検査:腹腔内に液体貯留(腹水貯留)、脾臓の腫瘍

と様々な異常が認められました。トータルすると

脾臓腫瘍の破裂による血腹

ということが分かりました。

あまり聞き慣れた臓器ではないかもしれませんが脾臓とは古くなった血液をろ過してくれる血液のタンクみたいなものです。

必要な処置は手術により脾臓自体を摘出することで、正直手術自体は難しいものではないですが、

破裂により貧血、および循環血液量不足による腎前性の腎数値の上昇

ということが手術および術後の管理を難しくさせています。

勇気がいることでしたが、今慌てて手術をしてしまうと腎臓にさらに負荷がかかると判断し、点滴をしてから手術を行うこととしました。

幸い点滴のおかげで腎数値は改善し、輸血の準備もできたので、手術を行うこととしました。

実際にお腹を開けてみると、腹腔内では出血があり、脾臓の腫瘍も大きいものでした。電気メスを使いながら更なる出血を防ぎながら、無事脾臓を摘出できました。術後の状態も安定しており4日目には自分で歩いて退院できました。

 

今回の子は毎年フィラリア検査時に血液検査をしており、貧血もなく、肝臓、腎臓ともに全く問題ありませんでした。しかしながら、エコー検査を行っていたわけではなかったので、今回の脾臓腫瘍への対処が後手に回ってしまいました。脾臓は元々血液検査では異常が検知できないので、エコー検査じゃないと確定できないのです。

よくオーナーさんから

血液検査だけで腫瘍があるか分かりますか?

と聞かれるのですが、答えは

ノー

です!人間だって色んな検査を組み合わせてようやく分かるものなので、ワンちゃん、ネコちゃんだって同じです。

何歳からという決まりはないですが、何も問題なかったらなかったで良いわけですから、大きな声でこの子は健康ですと言えるように血液検査だけでなくその他の検査も検討していただくと助かります。