胃拡張捻転症候群とは胃にガスがたまって膨らみ、捻れる事によって様々な症状を引き起こす病気です。
何かしらの原因で過剰にガスがたまり、拡張して捻れて行く場合もありますし、胃が捻れてしまった結果、ガスがたまってしまう場合があります。
消化管や脾臓、それらに向かう血管も含めて捻れてしまうため、血流が遮断され、全身の血液量が減少します。
これにより、低血圧、不整脈を起こし、ショック状態に陥る可能性があります。
また、細菌が血管内に入り込み、敗血症、エンドトキシンショックなどを引き起こ場合があります。
放置してしまうと、数時間で死に至ってしまうこともあり、非常に死亡率が高く、緊急的な疾患です。
●危険因子
1日1回の多量な食事
早食い
食後の激しい運動
加齢
ストレス など
●好発犬種
グレート・デーン、ワイマラナー、セント・バーナード
ジャーマン・シェパード、ドーベルマン・ピンシャー など
大型〜超大型で胸郭が深い犬種に多くみられます。
●治療法
開腹し、捻転している胃とその他臓器を正しい位置に整復
再発防止の為に胃を腹壁(あるいは肋骨)に固定
【症例】
フラットコーテッド・レトリーバー
11歳5ヵ月齢、避妊済み雌
食後、嘔吐を繰り返し、ぐったりしているため来院されました。
来院時は腹部がパンパンに張っていたため、胃拡張捻転症候群を考え、すぐにX線検査を実施しました。
X線画像では、胃が著しく拡張し、捻転ライン(赤矢印)が認められたため、胃拡張捻転症候群と診断し、直ちに開腹手術を行いました。
胃内のガスを抜去しながら、胃を元の位置に整復しました。
その後、ベルトループ固定法という手技を用いて、胃を肋骨に固定しました。
麻酔も安定していて、術後の経過は良好です。
一般的には大型・超大型犬に多いとは言われていますが、中型・小型犬でも起こります。どんな犬種でもなる可能性はあります。
一度に大量にご飯をあげたり、食後すぐ運動させる等、回避できることは色々ありますので、日々の生活で気を付けていくことが大切です。
食後に急に嘔吐をして、ぐったりするような事があれば、様子を見ず、すぐにご連絡ください。
また、好発犬種では、若いうちに胃固定を行う予防的手術も行っていますので、お気軽にご相談ください。