【症例紹介】環椎軸椎不安定症

環椎軸椎不安定症は、第一頚椎(環椎)と第二頚椎(軸椎)との間でおこる不安定症で、亜脱臼を伴うこともある神経外科疾患です。

写真の青色矢印が環椎、黄色矢印が軸椎です

正常な環椎軸椎関節は軸椎の歯突起を中心に環椎、頭部が回転する構造になっています。

その他の関節と同じように、環椎と軸椎との間にも靭帯が付着していて、関節構造ができています。

環椎軸椎不安定症の原因は、先天性と外傷性の二つの原因に分かれます。

先天性の場合は歯突起の形成不全や靭帯の欠損などが原因となり、超小型犬から小型犬によく見られますが、先天性でも症状が見られず、激しい運動などがきっかけで発症する場合があります。

外傷性の場合、過度な頸部の屈曲により環椎軸椎関節が脱臼し発症します。先天性ではない動物では歯突起が発達成長しているため、環椎軸椎関節が脱臼した場合、激しい脊髄損傷が起こり死に至ることがあります。

今回環椎軸椎不安定症を発症したわんちゃんは1歳6カ月のマルチーズで、同居のわんちゃんと遊んでいる最中にキャンと鳴いて、体が動けなくなってしまい来院されました。

臨床症状と神経学的検査から、四肢麻痺の原因が頸部の脊髄疾患であると疑いCT検査を行いました。

画像の矢印の箇所が軸椎の歯突起で、正常に比べて歯突起が上に持ち上がっていることがわかりました。

環椎軸椎不安定症と診断し、手術による治療を行いました。

外科手術では環椎と軸椎をスクリューやピン、骨セメントを使用して固定しました。

手術後のレントゲン画像では環椎軸椎が固定されています。

手術前は四肢麻痺の状態でしたが、術後徐々に症状は改善し、ふらつきがありましたが、歩けるようになって退院しました。

術後2ヶ月経過し、以前のように走り回ることができるようになりました。

環椎軸椎不安定症の臨床症状は、頸部痛に始まり徐々に悪化する場合もありますので、頸が痛そう歩き方がおかしいフラつくなど気になる症状がありましたら、すぐにご来院ください。