【症例報告】横隔膜ヘルニア

外出自粛中ですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか?

今回は Stay Home に我慢できず、お家から脱走したことで横隔膜ヘルニアを起こした猫ちゃんのお話です。

 

横隔膜とは胸とお腹の間にある膜状の構造物のことです。

焼き肉でいうとハラミにあたる部分ですね。

ヘルニアとは飛び出すという意味で、身近で多いのは臍ヘルニアがあります。いわゆる出べそですね。

簡単にいうと、横隔膜ヘルニアとは横隔膜に穴があいてその穴から臓器が飛び出してしまう状態のことをいいます。

教科書的には、心臓や肺が入っている「胸腔」と、肝臓や腎臓などの臓器が入っている「腹腔」の間にある「横隔膜」が裂け、腹腔内の臓器が胸腔内に入り込んでしまう病気のことを指します。

原因としては、

①外傷性横隔膜ヘルニア

交通事故、落下などの外傷により横隔膜が裂けヘルニアを起こす。

②先天性横隔膜ヘルニア

生まれつき横隔膜の一部が欠損しヘルニアを起こす。

が挙げられます。

 

今回の症例報告は、脱走中の事故で外傷性横隔膜ヘルニアを起こした猫ちゃんの緊急的横隔膜ヘルニア形成術をご紹介します。

 

正常な猫ちゃんのレントゲン写真

矢印は正常な横隔膜です。この膜があることで向かって左の胸腔と向かって右の腹腔が分け隔てられています。

横隔膜ヘルニアを起こした猫ちゃんのレントゲン写真

あるべきはずの横隔膜が確認できず、胸腔内に腹腔の臓器が入り込んでいます。こうなると入り込んだ臓器が邪魔をして、肺が十分に膨らめず呼吸が非常に苦しい状態になります。

手術は入り込んだ臓器を元の位置に戻し、裂けてしまった横隔膜を糸で縫合し新たな横隔膜を形成する方法です。

横隔膜ヘルニア手術後のレントゲン写真

横隔膜を形成したことにより、胸腔に入り込んでいた臓器が元の位置に戻ったことが確認できます。

手術後は安静と、横隔膜が再び裂けないかなどの確認をするために数日の入院が必要になりますが、幸い手術後の経過は良く無事に退院することができました。

 

横隔膜ヘルニアは命に関わる病気です。高いところから落ちたなどの外傷後に呼吸が速いといった異常がある場合は早めに当院へご相談ください。