【症例紹介】脾臓腫瘤(腹腔鏡手術)

脾臓は赤血球の破壊と貯蔵、造血、免疫として働く大切な臓器です

脾臓の疾患は、腫瘍性疾患、非腫瘍性疾患、その他の疾患に分類されますが、犬では50%が腫瘍性疾患と報告されています

犬では脾臓の腫瘍性疾患の80%は血管肉腫という悪性腫瘍で、猫では肥満細胞腫が一般的です

血管肉腫は犬に多い脾臓の腫瘍性疾患ですが、心臓、肝臓、脳などに転移しやすい悪性腫瘍で、脾臓の血管肉腫を発見した時点で、転移している可能性があります

非腫瘍性疾患では多く見られるのが、血腫です

血腫は腫瘍ではありませんが、大きく膨らむと破裂して腹腔内出血を引き起こします

その他の疾患は胃捻転や外傷などです

脾臓の疾患は目立った症状がないため、健康診断やその他の疾患のために画像検査を行った際に発見される場合が多いです

ご紹介するワンちゃんも目立った症状は見られませんでした

超音波検査で脾臓に腫瘤を認め、犬では悪性腫瘍の割合も多く、腫瘍性疾患ではない場合も、破裂すると命に関わる問題となるため脾臓摘出手術を行いました

お腹に複数箇所のトロッカーを設置し、腹腔鏡手術を行いました

腹腔内の脾臓の様子は超音波検査の通り、大きな腫瘤を認めるものと

腫瘤が脾臓内部にあるため腹腔鏡でも脾臓に目立った異常が認められないものでした

血管のシーリング装置(電気メスのようなもの)を使用して、脾臓に出入りする血管を処理します

脾臓の血管が処理できたら、脾臓を臓器回収用の袋に回収します

袋に入れた脾臓を腹腔から摘出して手術は終わります

摘出した脾臓です

病理組織検査の結果は結節性の血腫でした

脾臓の疾患は治療方法が手術による脾臓摘出です

腹腔鏡手術でなければ、お腹を大きく切開することになりますし、飼い主様の不安も大きな選択になると思います

当然動物の体への負担も大きいです

腹腔鏡手術では、5mmのキズが2箇所と2〜3cmのキズが1箇所ですので体への負担が少なくてすみます

手術時間も通常の開腹手術と変わりません