【症例紹介】子宮蓄膿症

子宮蓄膿症は、子宮内膜の増殖に細菌感染を伴うことで発症します

発情周期において、卵胞が発育し、排卵後に黄体ができますがわんちゃんは妊娠しなくても2ヶ月間は黄体ホルモンが分泌され続けます

子宮蓄膿症が発症するのは発情開始後1〜2ヶ月で、ちょうどその時期に黄体が退行するため、黄体ホルモンの分泌が子宮蓄膿症に関連していると考えられています

ねこちゃんは後尾排卵動物ですので、黄体期が少ないため子宮蓄膿症の発症は稀です

子宮蓄膿症を発症すると子宮内に感染している細菌が産生する毒素によって具合が悪くなっていきます

子宮蓄膿症は外陰部から膿が出てくる開放性子宮蓄膿症と、外陰部から膿が出てこない閉鎖性子宮蓄膿症がありますが、一般的に閉鎖性子宮蓄膿症の方が重篤な症状が見られることが多いです

【診断】

一般的な症状は、食欲不振、元気消失、発熱、多飲多尿(お水をたくさん飲んでおしっこが多い状態)、嘔吐などです

発情出血開始からの期間や、状態を伺い血液検査と画像検査を行います

超音波検査で子宮内膜の肥厚、子宮内の液体貯留を確認します

【治療】

子宮蓄膿症を発症すると重篤な状態で、動物病院に来院しますので救急救命として手術によって子宮と卵巣を摘出する治療法が最も勧められます

麻酔に対するリスクが非常に高い場合などは内科的な治療法も選択しますが、内科治療は治癒に時間がかかり、100%の治療効果がない場合があります

 

ご紹介するわんちゃんは13歳のフラットコーテッドレトリバーで、出産経験がある子でした

1週間ほど前から元気、食欲がないとの理由で来院されました

血液検査では白血球の増加が見られました

超音波検査では液体の溜まった子宮が確認されました

手術により卵巣子宮を摘出しました

写真は膿が溜まっている子宮です

シーリングデバイスを使用して卵巣の血管を処理しました

シーリングデバイスを使用して子宮の血管を処理し、子宮を摘出して手術終了です

手術後2〜5日間は入院が必要になりますが、わんちゃんは無事に退院してお家へ帰りました